当研究グループは、(株)日本触媒と共同で、混合した原料を塗って焼かずに多孔質セラミックス(酸化チタン)を、プラスチック基板へ直接コーティングする技術を開発しました。
酸化チタンは、光触媒 活性が高く、微生物の除菌や滅菌効果があることが知られています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を滅菌できる可能性があることから、酸化チタンコーティングは再注目されています。
しかしながら、酸化チタンなどのセラミックスは、一般的に焼結温度が高いため、これまでプラスチック基板など耐熱性の低い基板へコーティングする際は、超高真空技術 を活用するもしくは接着剤やバインダーなど接着補助機能が必須でした。
今回、菅原准教授らの研究グループは、原料の有機金属塩と安定剤(ナノ構造の形成に寄与する対カチオン)を混合した原料を基板に塗布して、単純に加熱することにより基板へ直接ナノ構造(多孔体)薄膜をコーティングすることに成功しました (図1) 。また、これを応用することにより、プラスチック基板へ酸化チタンのナノ構造多孔質薄膜をコーティングすることに成功しました。これにより、あらゆる基材の表面へ酸化チタンのナノ構造多孔質を成膜することができ、幅広い場所で微生物の滅菌・除菌コーティングの活用が期待されます。さらに、酸化チタンは、人体に無害かつ白色顔料としても知られており、ナノ多孔質の光散乱特性 を利用したホワイトニングコートにも応用が期待されます。
本研究成果は、2020年6月1日(月)に米国科学誌「ACS Applied Electronic Materials」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:”Formation of Metal-Organic Decomposition Derived Nanocrystalline Structure Titanium Dioxide by Heat Sintering and Photosintering Methods for Advanced Coating Process, and Its Volatile Organic Compounds’ Gas-Sensing Properties”
著者名:Tohru Sugahara, Leila Alipour, Yukiko Hirose, Yusufu Ekubaru, Jun-ichi Nakamura, Hironobu Ono, Nobuyuki Harada, and Katsuaki Suganuma
論文リンク:https://doi.org/10.1021/acsaelm.0c00237
なお、本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)の「科研費挑戦的萌芽研究(16K13637)」、文部科学省(MEXT)の「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一部として行われました。また、大阪大学工学部(応用自然科学科)迫美由紀氏の協力を得て行われました。