大阪大学産業科学研究所の菅原徹助教と金沢大学の辛川誠准教授らの研究グループは、「原料を塗るだけでセラミックス超薄膜をコーティングする技術」を世界で初めて開発しました。
近年、有機太陽電池の緩衝層(電子・正孔輸送層)には、セラミックス薄膜を用いた研究開発が盛んになっています。従来のセラミックス薄膜の製造プロセスでは、加熱またはそれに代わる技術(例えばUV照射など)により焼結と呼ばれる工程を経る必要がありました。
今回、菅原と辛川准教授らの研究グループは、原料を混ぜて塗るだけで、ナノメートルスケール(10億分の1メートル)のセラミックス超薄膜を成膜することに成功しました。この超薄膜の膜厚は、およそ5から100ナノメートルの間で精密に制御することができます。この成膜技術を使って、有機太陽電池を作製し変換効率を調べたところ、約20ナノメートルの超薄膜で最も高い変換効率を示しました。また、加熱焼結によって成膜されたセラミックス薄膜を用いて作製した有機太陽電池と比較して同程度の変換効率を実現しました。
これにより、これまで加熱が必要であったセラミックス薄膜の成膜工程から加熱工程を省略することができるため、製造プロセスの大幅な短時間化と低コスト化が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、7月20日(金)午前10時(英国時間)に公開されました。
Thin Film of Amorphous Zinc Hydroxide Semiconductor for Optical Devices with an Energy-Efficient Beneficial Coating by Metal Organic Decomposition Process”(DOI: 10.1038/s41598-018-27953-6)
著者名:Makoto Karakawa, Tohru Sugahara, Yukiko Hirose, Katsuaki Suganuma and Yoshio Aso.